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   歴史回廊(遷都):オリエント(ウバイド・シュメル)
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 「洪水伝説」の起源
 出典:小林登志子『シュメル−人類最古の文明』:中公新書
    序章・むかしイラクは……
    ・メソポタミアの風土・ティグリス・ユーフラテス河の間で
    :2・3頁

  7日よ7晩の間、大洪水が国土で暴れ

  巨大な船が洪水の上を漂った後で、

  ウトゥ神が昇って来て、天と地に光を放った。

  ジウスドゥラは巨大な船の窓を開いた。

      (シュメル語版『大洪水伝説』)

 水は、人間をはじめとするすべての生物にとってなくてはならないものである。

 だが同時に、水はまた怖いものである。

 科学技術が発達した21世紀になっても、

 津波や大洪水のような自然の脅威を前にすると人間は小さな存在で、なにもできない。

 いわんや、科学知識が未発達であった古代社会では、圧倒的な水の力を前にしたとき、

 その恐怖はいかばかりであったか。

 人間は無力であることを痛感させられたであろう。

 だが、人間はうちのめされたままではなくて立ち直りうることを、後世に伝えようとした。

 これが世界各地にさまざまな形で「洪水伝説」が分布している理由である。

 「洪水伝説」のなかでも最もよく知られているのが、

 次に紹介する『旧約聖書』

 (本来ユダヤ教徒の聖典でキリスト教徒によって採り入れられたもの)

 「創世記」の「ノアの大洪水」である。

 地上に人の悪が増したことから、神は大洪水を起こして人間を滅ぼそうと考えるが、

 「神にしたがう人」ノアだけは助けてやろうと箱船を作らせた。

 雨が40日40夜降り続け、洪水は40日間地上を覆い、

 箱船にいたノアとその家族や家畜以外は死に絶えた。

 150日の後に水が引き、箱船はアララト山の上に止まった。

 「創世記」には河が氾濫したとは書かれていないが、

 この大洪水は大河の氾濫が引き起こしたものであり、

 『旧約聖書』の主な舞台でるイスラエルで起きたことではないと考えている。

 なぜなら現在のイスラエル国の地図を見ても、大洪水の起こる大河はない。

 それでは「創世記」の大洪水とはどの大河のものだろうか。

 大河といえばイスラエルに近いエジプトにはナイル河がある。

 たしかに、ナイル河では洪水は起きたが、定期的に起こり、

 いつ起きるかがわかっていた。

 前もってわかっていれば、人間は洪水に備えることができ、脅威ではなかった。

 そこで定期的に洪水が起こるナイル河は「洪水伝説」の舞台とは考えにくい。

 西アジア世界の大河といえば、ユーフラテス河とティグリス河である。

 この両河をめぐっては、さまざまな大洪水の伝説がある。

 「ノアの大洪水」も両河の大洪水を伝える伝説にさかのぼれそうだ。

 以下では、この両河のあらましと洪水伝説を見てみよう。
小林登志子『シュメル−人類最古の文明』:中公新書



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(2008/03/26(水) 01:53)

 シュメル語版『大洪水伝説』文書断片
 出典:小林登志子『シュメル−人類最古の文明』:中公新書
    序章・むかしイラクは……
    ・メソポタミアの風土・ティグリス・ユーフラテス河の間で
    :1頁
 
 西アジアで発掘をおこなうさいには、考古学者に混じって、

 「粘土板読み」と呼ばれる学者が同行することがしばしばある。

 先史時代やイスラム時代以降の遺跡は別にして、

 歴史時代の多くの遺跡からは粘土板文書が出てくるので、

 これに書かれている楔形文字を読むための学者である。

 粘土板に書かれた楔形文字は読みにくい。

 それでも虫めがねを使って凝視していると、文字が浮かび上がってくる。

 写真に撮っても読みにくいので、

 結局粘土板に刻まれた楔形文字は一字一字間違えないように

 紙に写す作業をするしかない。

 こうした根気の要る基礎作業を終えて、

 その後で書かれた内容が翻訳される。

 ※図:シュメル語版『大洪水伝説』文書断片

  図はニップル市で発見されたシュメル語版

  『大洪水伝説』粘土板文書断片の表裏を

  シュメル学者A・ペーベルが手写したものである。

  (ペンシルヴェニア大学博物館蔵)

小林登志子『シュメル−人類最古の文明』:中公新書

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(2008/03/26(水) 01:40)

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